その相続登記、漏れはありませんか?意外と知らない「公衆用道路」や「集会所」の罠
目次
相続が始まったら、まず不動産の把握から
ご家族が亡くなられ、相続の手続きを進める際、重要になるのが「亡くなった方(被相続人)がどんな財産を持っていたか」を正確に把握することです。
特に不動産は、価値が高いことが多く、手続きも複雑なため、慎重な調査が求められます。
手がかりは「固定資産税課税通知書」…だけでは不十分?
毎年、市区町村から送られてくる「固定資産税課税通知書(明細書)」や「納税通知書」を手がかりに、被相続人が所有していた不動産を確認することができます。
確かに、この通知書には課税対象となっている土地や家屋の情報が記載されており、重要な資料であることは間違いありません。
しかし、この通知書に載っている情報が、被相続人の所有する全ての不動産とは限らない、という点に注意が必要です。
なぜなら、固定資産税課税通知書は、あくまで「課税対象となっている不動産」をリストアップしたものです。そして、現在の日本の不動産登記制度では、土地一筆ごと、建物一棟ごとに登記簿が作成され、管理されています。人ごとに登記簿が作成されていないのです。
通知書に載らない不動産とは?
では、どのような不動産が通知書に載らない可能性があるのでしょうか?代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
①公衆用道路(私道)の持分
自宅前の道路が私道で、近隣住民と共有している場合などが該当します。公衆用道路は、非課税のため通知書に記載されないことが多いです。
②共有の集会所やゴミ捨て場の土地持分
マンションの住民で共有している、集会所やゴミ捨て場などで、持分割合が非常に小さい場合など。評価額が低かったり、非課税だったりすると記載されないことがあります。
これらの不動産は、単独で見れば価値が低いように思えるかもしれませんが、相続登記を忘れてしまうと、後々大きな問題に繋がる可能性があります。
登記漏れのリスクとは?
もし、これらの「隠れた不動産」の相続登記を忘れてしまうと、どうなるのでしょうか?
①いざ売却しようとした時に売れない
メインの土地・建物を売却しようとしても、それに付随する私道持分などの登記が漏れていると、買主が見つからなかったり、売却手続きが滞ったりする可能性があります。
②想定より低い価格でしか売却できない
不動産業者によっては、登記漏れがあることを理由に、相場より安い価格での買い取りを提示してくる(買い叩かれる)ケースも考えられます。
③次の相続でさらに複雑化する
登記漏れを放置したまま次の相続が発生すると、関係者が増え、手続きがさらに複雑化・困難化してしまいます。
どうやって見落としを防ぐ?
固定資産税課税通知書だけに頼らず、不動産の見落としを防ぐためには、以下のような調査を行うことが有効です。
①名寄帳(固定資産課税台帳)の取得
市町村役場で、被相続人名義の不動産を一覧にした「名寄帳」を取得します。これは、その市区町村内にある被相続人名義の不動産(課税・非課税含む)を網羅的に確認できる可能性が高い書類です。(自治体によって名称や取得方法が異なる場合があります)
②固定資産評価証明書の取得
課税通知書に記載のない不動産が見つかった場合などに、その評価額を確認するために取得します。
③登記事項証明書(登記簿謄本)の精読
判明している不動産の登記事項証明書を取得し、「共同担保目録」や「地役権」などの記載がないか、周辺の土地との関係性などを詳しく確認します。思わぬ共有地が見つかることもあります。
④権利証(登記済権利証)や登記完了証の記載の確認
被相続人が不動産を購入したときの登記済証や登記完了証が見つかれば、より安心感が増します。
これらは登記の申請ごとにつくられることが多く、申請した不動産の一覧が記載されています。
つまり、被相続人が不動産を購入したとき、メインとなる土地やマンションの一室と一緒に、前面道路や集会所も購入していること多く、登記済権利証や登記完了証を確認することで、見落とし防止に繋がります。
経験が必要なケースも
これらの調査はご自身で行うことも可能ですが、登記簿の読み解きや、権利関係の把握には専門的な知識や経験が必要となる場面も少なくありません。特に、古い分譲地や複雑な権利関係を持つ土地の場合、公衆用道路や集会所の存在を見つけるのは容易ではありません。
まとめ:相続不動産の調査は慎重に、専門家への相談も検討を
相続不動産の調査は、相続手続きの非常に重要なプロセスです。固定資産税課税通知書は重要な手がかりですが、それだけを鵜呑みにせず、名寄帳の取得や登記事項証明書の確認など、多角的な調査を心がけましょう。
もし、「自分で調べるのは難しそう」「見落としがないか心配」と感じたら、私たちにご相談ください。専門的な知識と経験に基づき、正確な不動産調査と、その後の相続登記手続きをサポートいたします。
思わぬ不動産の見落としによる将来的なトラブルを防ぐためにも、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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