共有名義の不動産、片方が死亡したらどうなる?相続登記の手続きと知っておきたい注意点

- 「マイホームを夫婦共有名義で購入」
- 「実家を兄弟で公平に相続したい」
…不動産を共有名義で持つことは、公平で合理的な選択かもしれません。しかし、実はこの「共有名義」という状態そのものが、多くの潜在的なリスクを抱えていることをご存知でしょうか?
- 不動産を共有名義で持つことは、意思決定の困難さ、権利関係の複雑化、売却や活用の制約など、多くのリスクを伴います。
- 特に共有者の一人に相続が発生すると、これらの問題が一気に表面化し、深刻なトラブルに発展するケースがあります。
- 問題を複雑化させないためには、共有名義のリスクを正しく理解し、早期に対策を講じること、そして相続の専門家へ相談することが重要です。
「うちは大丈夫」と思っている方も、他人事ではありません。この記事では、不動産を共有名義で持つことの具体的なリスク、相続が発生した際の必須手続き(令和6年から義務化された相続登記)、そして将来のトラブルを未然に防ぐための有効な対策について、司法書士が解説します。
目次
共有名義の不動産に潜む「主なリスク」とは?
不動産を共有名義で持つことには、具体的に以下のようなリスクが潜んでいます。
意思決定がとにかく難しい(原則、共有者全員の同意が必要)
不動産を売却したい、賃貸に出したい、大規模なリフォームをしたいといった重要な行為には、原則として共有者全員の同意が必要です。次のような事態に陥った場合には、大切な不動産が「塩漬け」状態になる恐れがあります。
- 不動産を売却したい、賃貸に出したいと思っても、共有者全員の同意が得られず何もできない。
- 連絡の取れない共有者や、意見の合わない共有者が出てきて話し合いが進まない。
- 共有者の一人が認知症になるなどして意思表示ができなくなり、手続きが凍結してしまう。
相続発生で、権利関係がどんどん複雑化する
共有者の一人が亡くなると、その方の持分は相続の対象となります。相続人が複数いれば、その持分がさらに分割され、共有者が増えてしまう可能性があります。結果として、会ったこともない人や連絡の取れない人と不動産を共有するという事態も起こり得ます。
売りたい時に売れない、貸したい時に貸せない「塩漬け不動産」に
上記1、2の結果、いざ不動産を処分したい、有効活用したいと思っても、共有者全員の足並みが揃わず、結局何もできない「塩漬け」状態になってしまうリスクがあります。管理費用や固定資産税だけがかかり続ける、負の財産と化すこともあります。
自分の持分だけの処分も容易ではない
「自分の持分だけなら自由に売れるのでは?」はい。自由に売ることができます。しかし、共有持分のみを市場価格で買い取ってくれる人は非常に限定的です。他の共有者との関係性などから、買い手が見つかりにくい、または大幅に安い価格でしか売却できないケースがほとんどです。
住宅ローンの問題(相続発生時)
共有名義で住宅ローンを組んでいる場合、共有者の一人が亡くなると、団体信用生命保険(団信)の加入状況によって残債務の取り扱いが大きく変わります。適切な手続きをしないと、他の共有者や相続人に想定外の負担がかかる可能性があります。
【特に注意!】共有者の死亡と「相続登記の義務化」
共有名義のリスクが最も顕在化しやすいのが、共有者の一人に相続が発生した時です。亡くなった方の持分は相続財産となり、その権利を法的に確定させるために「相続登記」の手続きが必要になります。
そして、この相続登記は2024年4月1日から法律で義務化されました。相続によって不動産(共有持分を含む)の取得を知った日から3年以内に正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
この相続登記を怠ることが、さらなる権利関係の複雑化を招き、前述のリスクをより深刻なものにしてしまう入り口となるのです。
では、どうすればいいの? 相続発生時の手続きと司法書士の役割
「手続きが難しそう…」と心配されるかもしれませんが、基本的な流れは通常の相続登記と同様です。
- 相続人の調査・確定
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得し、法的に誰が相続人になるのかを確定します。
- 遺言書の確認
- 亡くなった方が遺言書を残していないか確認します。遺言書があれば、原則としてその内容に従います。
- 遺産分割協議
- 遺言書がない場合や、遺言で指定されていない財産がある場合は、相続人全員で共有持分を含む遺産の分け方を話し合い、遺産分割協議書を作成します。
- 相続登記の申請
- 必要書類(戸籍謄本一式、遺産分割協議書、固定資産評価証明書など)を揃え、不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記を申請します。
これらの手続きはご自身でも可能ですが、戸籍の収集・読解や書類作成は専門知識が必要で、非常に手間と時間がかかります。相続の専門家である司法書士にご依頼いただければ、戸籍収集から書類作成、法務局への申請まで一括して代行いたしますので、お客様の負担を大幅に軽減できます。
トラブルを未然に防ぐ!「共有」のリスクを減らすための生前対策
将来のトラブルを避けるためには、生前の対策が非常に重要です。
遺言書を作成する
ご自身の共有持分を誰に相続させるかを明確に指定しておくことで、無用な争いを防ぎ、スムーズな相続を実現できます。共有名義のリスクを考慮した上で、最も基本的な対策と言えます。
生前贈与や共有持分の売買を検討する
共有関係そのものを解消する、あるいは特定の相続人に持分を集中させる方法です。ただし、贈与税や譲渡所得税などの税金、手続き費用も考慮に入れる必要があります。
家族信託(民事信託)を活用する
信頼できる家族に財産の管理・処分を託す制度で、ご自身の意思に基づいた柔軟な財産承継が可能です。認知症対策としても有効です。
そもそも共有名義にしない、または早期に共有状態を解消する
これから不動産を取得する場合は、安易に共有名義を選択しないことも一つの予防策です。既に共有状態である場合は、可能な限り早期に共有状態の解消を検討することも重要です。
どの対策がご自身の状況に最適かは、個別の事情によって異なります。ぜひ、司法書士にご相談ください。
税金について(相続税・登録免許税の概要)
相続に関連して発生する主な税金は「相続税」と「登録免許税」です。共有持分の場合、亡くなった方の持分に対して計算されます。
相続税
亡くなった方の持分を含む全相続財産の合計額が、基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合に課税されます。
登録免許税
相続登記を申請する際に納める税金で、「不動産の固定資産税評価額 × 亡くなった方の持分割合 × 税率(相続の場合は原則0.4%)」で計算されます。
(例)固定資産税評価額が3,000万円の不動産で、亡くなった方の持分が2分の1の場合の登録免許税
3,000万円 × 1/2 × 0.4% = 6万円
まとめ
不動産を共有名義で持つことは、便利な側面がある一方で、多くのリスクを内包しています。特に相続が発生すると、そのリスクは一気に現実のものとなり、解決が困難なトラブルに発展しかねません。
「うちはまだ大丈夫」と問題を先送りにせず、まずは共有名義であることのリスクを正しく認識することが大切です。そして、問題が深刻化する前に、専門家である司法書士に相談し、適切な対策を講じることを強くお勧めします。
司法書士法人槐事務所では、共有名義不動産に関する様々なご相談(相続登記、生前対策、共有物分割など)に豊富な経験と専門知識をもって対応しております。お客様一人ひとりの状況を丁寧に伺い、最善の解決策をご提案いたします。
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