【専門家へ相談を】法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いたら?

困惑する女性

 ある日突然、法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」という見慣れない手紙が届いたら、驚かれることと思います。

 まず結論から申し上げます。この手紙を受け取ったら、ご自身だけで判断せず、私たち司法書士法人槐事務所のような相続の専門家にご相談ください。 決して放置してはいけませんが、慌てる必要もありません。適切な対処法を一緒に見つけましょう。

その手紙、一体なに?「長期間相続登記等がされていないことの通知」とは

長期間相続登記がされていないことの通知サンプル

 この通知は、簡単に言うと「あなたが相続人の一人である可能性のある土地について、長い間、亡くなった方から相続人への名義変更(相続登記)が行われていません。手続きを検討してくださいね」という法務局からのお知らせです。

 なぜ今このような手紙が送られてくるのかというと、法務局が行っている「長期相続登記等未了土地解消作業」によって、あなたが相続人の一人としてリストアップされたからです。

「長期相続登記等未了土地解消作業」って何のこと?

 これは、国が進めているプロジェクトで、所有者が亡くなった後も長期間にわたり相続登記がされていない土地(いわゆる「所有者不明土地」)を減らすための全国的な調査活動です。

調査の対象となるのは、主に以下のような土地です。

  1.  土地の所有者が亡くなってから原則として10年以上が経過している土地(令和4年度より前は30年以上でした)。戦前の旧民法下で開始した相続も数多く含まれます。
  2.  公共の利益などの観点から、相続人を明らかにする緊急性や必要性が高いと判断された土地。

調査の流れは以下のようになっています。

  1.  まず、全国の法務局が、市区町村などの官公庁から「相続人を調査してほしい」という要望のあった土地をリストアップします。
  2.  次に、法務局が、候補となった土地の登記事項証明書(登記簿謄本)で所有者を確認します。
  3.  所有者の氏名・住所から、住民票や戸籍謄本などを取得し、亡くなってから10年以上経過している土地について、法定相続人を調査します。
  4.  この相続人調査(主に戸籍や住民票などの収集と、法定相続人をまとめた家系図のような「法定相続人情報」の作成)の一部は、私たちのような司法書士事務所や公共嘱託登記司法書士協会などが、一般競争入札を経て国から委託されて行っています。
Information
  1.  委託先が作成した法定相続人情報や収集した戸籍は、法務局によって厳格にチェックされます。
  2.  最終的に、その土地の登記記録に「法定相続人情報」の作成番号が記録されます。

 この番号を相続登記の申請書に記載することで、本来必要となる大量の戸籍謄本等を法務局に提出する必要がなくなるというメリットがあります。

通知は誰に送られてくるの?

家系図

 法務局が調査して判明した法定相続人は、数世代にわたる相続が繰り返された結果、数十人、場合によっては100人を超えることも珍しくありません。

 この通知は、その法定相続人全員に送られるわけではなく、その中から選ばれた1名に送付されます。 誰に送るかについて、私たちの経験則では、

  1. その土地の固定資産税の納税義務者
  2. その土地の近くにお住まいの方
  3. その他、通知が確実に届きそうな方

といった順で選ばれているのではないかと推測しています。

通知を受け取らなかった他の相続人はどうすればいい?

 ご自身が通知を受け取っていなくても、親族が受け取った、あるいはその土地の相続人である可能性がある場合は、以下の方法で情報を確認できます。

  • 登記簿謄本の確認: その土地の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すると、「法定相続人情報の作成番号」が記載されている場合があります。
  • 法定相続人情報の写しの取得: 作成番号がわかれば、法務局に対し、その番号に基づいて作成された法定相続人情報(家系図のようなもの)の写しを請求することができます。この写しの交付手数料は無料です。 ただし、請求できるのは、法定相続人情報に記載されている方、その法定相続人、官公庁などの利害関係人、またはこれらの代理人に限られます。

 そもそも、この「長期相続登記等未了土地解消作業」は、多くの場合、その土地の相続人を調査してほしいという官公庁からの要望がきっかけとなっています。そのため、今後、法務局以外の官公庁から何らかのアクションがある可能性も考えられます。

法定相続人情報は登記以外にも使えるの?

 残念ながら、この作業で作成された「法定相続人情報」は、原則として不動産の登記手続き以外には使用できません。

 例えば、相続放棄をする際に家庭裁判所に提出する戸籍の代わりとして使用することは、現在のところ認められていません。よく似た制度に、法務局の認証文が付される「法定相続情報一覧図」というものがありますが、今回の通知に関連する法定相続人情報の写しには、そのような認証文は記載されません。

 ただし、相続登記以外の登記手続きや、その土地を管轄する法務局以外の法務局、その土地以外の不動産の登記手続きにも使用できるとされています。

この通知を受け取ったら、相続登記義務化の罰金(過料)の対象になる?

 令和6年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく期限内に登記をしないと10万円以下の過料が科される可能性があることとされました。では、この通知を受け取った場合、すぐに過料の対象になるのでしょうか?

現在の運用では、その可能性は低いと考えられます

 過料の対象となるか否かは、実際に登記を申請する際などに個別に判断されるとされています。

 この通知の対象となる土地は、前述の通り、相続関係が非常に複雑で、相続人の数が多かったり、連絡が取れない相続人がいたりするなど、簡単に相続登記ができないケースがほとんどです。このような状況は、相続登記をしないことについての「正当な理由」に該当する可能性が高いと言えます。

ただし、注意点が2つあります

損害賠償リスク

 相続登記を長期間怠ったことで、他の相続人や第三者に損害を与えてしまった場合、損害賠償請求をされるリスクは依然として残ります。

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相続放棄の期限

 もし、その土地を相続したくない(借金も含む)ため相続放棄を検討する場合、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所に申述する必要があります。この通知を受け取ったことが「知った時」と判断される可能性も考慮に入れるべきでしょう。

【重要】どうすればいい?専門家が教える対処法

 これまで長年にわたり、法務局の委託を受けて相続人調査や法定相続人情報の作成に携わってきた私たちの経験から申し上げますと、この通知が届くような土地は、相続登記を行うのが非常に困難なケースが多いのが実情です。 具体的には、以下のような理由が挙げられます。

  •  法定相続人の数が膨大(数十人~100人超えで、法定相続人情報が30ページを超えるものもあります。)
  •  法定相続人の中に、すでに亡くなっている方、連絡先が不明な方、海外に移住している方、外国籍になっている方が含まれている
  •  法定相続人が高齢で、意思確認が難しい、あるいは認知症などにより成年後見制度の利用が必要となるケースがある
  •  相続が繰り返される中で、相続人の一部または全員が亡くなり、その方にさらに相続すべき人がいない「相続人不存在」の状態となり、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任しなければならず、手続きに多くの時間と費用がかかるケースがある

 ただし、例えば、私たちが令和6年度に関与した東京法務局管内の案件では、比較的、相続関係がシンプルな土地が調査対象土地となっていました。そのようなケースであれば、相続登記を進めることを積極的におすすめできる場合もあります。

 では、具体的にどのような対処法が考えられるでしょうか?

相続登記を目指す

 もし、相続関係が比較的シンプルで、他の相続人とも連絡が取れ、協力が得られる状況であれば、相続登記を行うのが最も基本的な解決策です。法定相続人情報の番号を利用すれば、戸籍収集の手間を大幅に省くことができます。

相続登記おまかせプラン

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相続放棄を検討する

 しかし、現実的には「相続放棄」が有力な選択肢となるケースが多いかもしれません。

 私たちの私見ですが、そもそもこのような土地は、行政にとっては道路建設や公共施設の整備などで利用価値が見込まれるものの、個人にとっては売却も難しく、固定資産税の負担だけがのしかかるなど、市場経済的な価値が低いと判断されてきたために、積極的に相続登記がされてこなかった、という背景があるように思われます。

 そのような土地に対して、法定相続人が多額の費用と手間をかけて相続登記を行うメリットは少ないかもしれません。

相続放棄のお手続き

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法定相続人情報は登記以外に使えませんが、代わりの方法も

 この調査が行われた土地については、管轄の法務局に「法定相続人情報綴り込み帳」という、収集された戸籍謄本などがまとめてファイリングされたものが備え付けられます。この綴りを閲覧することで(閲覧手数料として500円が必要です)、相続放棄の申述に必要な戸籍(誰のどの戸籍が必要か)を効率的に確認し、最小限の範囲で取得することが可能になります。これにより、ご自身で一から戸籍を集める手間と費用を大幅に削減できます。

 また、「相続人申告登記」という、相続登記の義務化に伴い新設された簡易的な申出制度を利用する際にも、この情報は役立つ可能性があります。

 それでもやはり、将来的な責任やリスクを最も確実に回避する方法としては、「相続放棄」を検討するのが現実的と言えるでしょう。 ただし、相続放棄をするためには、どの範囲の戸籍が必要になるかなど、専門的な判断が不可欠です。

司法書士法人槐事務所にご相談ください

 「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いて、

  •  どうしたらいいか全く分からない…
  •  相続放棄をしたいけど、手続きが複雑そうで不安…
  •  自分の場合は相続登記をした方がいいのか、放棄した方がいいのか判断できない…

 このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、司法書士法人槐事務所にご相談ください。

 私たちは、長年にわたり法務局の「長期相続登記等未了土地解消作業」に実際に携わってきた経験から、このような複雑な相続案件に関する知識とノウハウを豊富に有しています。

 お客様の個別の状況を丁寧にお伺いし、相続登記、相続放棄、あるいはその他の最適な解決策をご提案させていただきます。もちろん、手続きの代行も承ります。

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