相続登記を放置した結果…相続人数十名、行方不明者も。解決までの道のり
「実家の土地、まだ亡くなった祖父の名義のまま…」そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
近年、長期間相続登記がされずに放置された結果、相続人の数が膨大になり、手続きが非常に困難になるケースがあり社会問題になっています。
今回は、実際に当事務所で扱った、相続人が数十名にまで増えてしまった土地の相続登記を完了させた事例をご紹介します。
相続登記の義務化もされ、他人事ではない問題です。
目次
ご相談の状況:相続人が数十名に!

ご依頼者様から、「父が亡くなったので、実家の土地を相続したい」とご相談がありました。
しかし、詳しくお話を伺うと、その土地はご依頼者様のお父様も相続登記をしておらず、さらにその前、つまりお祖父様が亡くなってから数十年もの間、登記が放置されていたことが判明しました。
戸籍を調査し、相続関係を確定していくと、当初の相続人からさらに相続が発生(数次相続)しており、最終的な相続人の数はなんと数十名にも膨れ上がっていました。
課題1:遺産分割協議が困難
土地の相続登記を行うためには、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどのように財産を相続するのかを決め、全員の実印と印鑑証明書が必要になります。
しかし、相続人が数十名もいると、全員と連絡を取り、話し合いをまとめるのは至難の業です。
中には、ほとんど面識のない遠い親戚の方もいらっしゃいました。
解決策1:相続分の譲渡で参加者を減らす
幸い、ご依頼者様のご意向に協力的な相続人の方々がいらっしゃいました。そこで、これらの協力的な方々には、「相続分の譲渡」をお願いしました。
これは、ご自身の相続する権利(相続分)を特定の人(今回はご依頼者様)に無償または有償で譲り渡すことを意味します。
これにより、遺産分割協議に参加しなければならない相続人の数を減らすことができました。
課題2:行方不明の相続人

相続人の中には、住民票上の住所には住んでおらず、現在の連絡先が全く分からない、いわゆる「行方不明」の方が含まれていました。他の相続人の方に尋ねても、どなたも行方を知りません。
遺産分割協議は相続人全員の参加が必須のため、行方不明者がいると手続きを進められません。
解決策2:不在者財産管理人の選任
このような場合、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任申立てを行うことが考えられます。
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を管理し、必要な法的手続き(今回の場合は遺産分割協議への参加)を行う権限を持つ人です。
この申立てを行い、裁判所から選任された不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことで、手続きを進めることが可能になりました。
課題3:話し合いに応じない相続人
相続分の譲渡や不在者財産管理人の選任を経ても、なお遺産分割の話し合いに応じていただけない相続人の方もいらっしゃいました。当事者間での協議が難しい場合、次の手段を考える必要があります。
解決策3:遺産分割調停の申立て
当事者だけでの話し合いが難しい場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることが考えられます。調停とは、家庭裁判所が間に入り、相続人全員から話を聞きながら、合意を目指して話し合いを進める手続きです。
当事務所で調停申立ての書類作成などをサポートし、調停を進めました。
解決:調停成立と相続登記完了
こうして、時間はかかりましたが、家庭裁判所での遺産分割調停が無事に成立しました。
調停で決定した内容(ご依頼者様が土地を相続する)に基づき、ようやくご依頼者様名義への相続登記を申請し、無事に完了させることができました。
まとめ:相続登記は放置せず専門家へ

今回のケースのように、相続登記を長期間放置すると、相続人が増え、手続きが非常に複雑化・長期化し、費用も余計にかかってしまう可能性があります。
2024年4月1日からは相続登記が義務化され、正当な理由なく期限内に登記をしない場合は過料の対象となる可能性もあります。
相続が発生したら、まずは司法書士などの専門家にご相談ください。
戸籍の収集から遺産分割協議のサポート、登記申請まで、スムーズな相続手続きをお手伝いします。
今回のような複雑なケースでも、様々な法的手続きを駆使して解決に導くことが可能です。
お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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